“真逆” 離乳食編 new
1.はじめに
2.本園と育児雑誌・ネットとの対比
食材 / タンパク質性食品 / メニュー / 堅さ・大きさ(調理形態)味 / メニュー / 手づかみ食べ / フォローアップミルク / バナナ・ソーセージ・練り物 / ベビーフード / 食器 / 青身の魚 / 冷凍した離乳食 / 雰囲気
3.離乳食の重要なポイント
はじめに
木更津社会館保育園は、子育て支援センター「ゆりかもめ寺町分館」で母向けの離乳食講座を開講している。
社会館に40年近く勤務してくださった桑島靖子社会館保育園管理栄養士。その指導による2015年10月5日の講座をに受講してくださった一人の母の感想を読んで園長は、もしかして「真逆?」と気づく。桑島栄養士の離乳食講座は、「ネットや市販されている育児雑誌とは相当違う。」とその母からの感想にあったからだ。
どのように「真逆」だったのか、表にまとめさせて頂いた。
本園と育児雑誌・ネットとの対比
下記の表は、一人の母から頂いた多岐にわたる記録を、園長が多少の補足の上でまとめたものです。
社会館 | 育児雑誌・ネット |
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食材 | |
・おかゆと野菜 | ・おかゆと野菜 |
・野菜は小松菜から始める (ほうれん草は7ヶ月から) |
・野菜は、ほうれん草から始める |
・カボチャ・さつま芋は他の野菜になれた頃 | ・カボチャを即使用 |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・カボチャ・さつま芋は他の野菜になれた頃。甘い味(カボチャ等)を後にすると、野菜嫌いにならない。 ・野菜は、苦みと酸味からなるものを優先させる。 |
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タンパク質性食品 | |
・離乳食開始後1ヶ月して開始 | ・離乳食開始後2~3週間で開始 |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・内臓が未発達の乳児には1ヶ月頃が良い。 ・アレルギーを予防するのにも重要な配慮。 |
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メニュー | |
・1才までは和食 | ・和食と洋食を交互に作る |
・ケチャップ・マヨネーズは1歳過ぎてから。 | ・ケチャップ等を最初から使う。 |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・調味料は、塩・砂糖・味噌・醤油。酢は、離乳食後期から。 ・和食の味をしっかりと刷り込むこと。1才過ぎても、洋食は時々にする。 ・10ケ月の赤ちゃんがパンを詰まらせて死亡。2021.11.6 |
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堅さ・大きさ(調理形態) | |
・月齢に従って、堅さ・大きさを変化させる。 | ・潰す・みじん切り・5ミリ角。離乳食は、小さくするもの、と理解。 |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・月齢によっては、「こんなに大きくて良いの?」と感じるが、月齢が進んでいるのに、つぶしたりみじん切りにしたものばかりだと、丸呑みが習慣になり、喉に詰まらせる危険もある。 5~6ヶ月頃(離乳食初期) 滑らかにすり潰す 7~8ヶ月頃(離乳食中期) 舌でつぶせる堅さ 9~11ヶ月頃(離乳食後期) 歯茎でつぶせる堅さ 1才~1才半(移行食期) 歯茎でかめる堅さ |
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味 | |
・離乳食開始時点、おかゆや野菜等を1つずつ別の器に分ける。スプーンも1つずつ別。 ・8ケ月ごろまでは、味付けなし。素材の味を生かす。旬のものを選ぶと、味付けなしでもおいしい。 |
・おかゆに野菜等を混ぜる。(人参がゆ・ホウレン草がゆ等) (混ぜた方が食が進む。) |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・特に初期は1つ1つの味を大切に記憶させると良い |
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メニュー | |
・和食、単調で良い。 | ・日々メニューを変える。 |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・8ヶ月後は、大人のメニューから一部取り分けて味を変える。 ・洋食等は1才過ぎからで良い。 |
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手づかみ食べ | |
・8ヶ月頃から手づかみ食べ開始。 | |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・少しずつコツをつかみ9~11ヶ月には上手に手づかみで食べます。 ・歯が生えると前歯でかじり取りながら食べます。 ・食卓の周りが汚れてしまいますが、長い間は続きません。 ・手づかみ食べを充分経験した子供は、上手にスプーン・箸を使います。 ・スプーンで、親から、一口一口きれいに食べさせられた子に比べると、とても食事の意欲が高まります。 ・途中から、食べ物を投げるなど遊び食べがはじまったなと思ったら、親が食べさせてあげるようにします。 |
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フォローアップミルク | |
・不要。乳児用調製粉乳のままで良い。 | ・9ヶ月、乳児用調製粉乳から転換 |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・9ヶ月頃から母乳から特に鉄分が不足するので、フォローアップミルクではなくタンパク質やビタミンCと一緒に、鉄分を多く含む食材で離乳食を作る。 |
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バナナ・ソーセージ・練り物 | |
・輸入品、加工品はできるだけ避ける | |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・果物について、バナナ等は輸入作物には残留農薬の問題があるので、輸入食品をなるべく避け国産のものを使う。キウイやパイナップルはアレルゲンが多いので1歳を過ぎてから与える。 ・ソーセージや練り物等の加工食品には、塩や添加物が多いので、なるべく避ける。 |
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ベビーフード | |
・使わない | |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・問題は塩味の濃さ。この濃い味に慣れた子供は、手作りの薄味では不満でベビーフードを好む。 ・手づかみ食べに適していない。季節感がない。 ・お出かけの時は使う事がある。 |
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食器 | |
・無地の陶器 | ・多彩なメラミン・プラスティック |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・端が直角に立ち上がった陶器のお皿(下記に写真あり。)は、重いので安定し、食べ物がこぼれにくくスプーンですくい易い。コップは、取っ手が無い方がよい。赤ちゃんは、両手でコップを持って食べてくれる。取っ手で遊ばないので良い。 ・お皿の絵柄ををなくす理由は、ニンジンの色など、食材自体のイメージを、赤ちゃんにはっきりと認識してもらうため。母がかわいいと思われた絵柄とニンジンや玉ねぎなどの形・姿と、どちらが好奇心いっぱいの赤ちゃんに印象的か. ・素敵な絵柄に、あなたの赤ちゃんの「好奇心がひきつけられる可能性は十分!」ではありませんか。ご用心! |
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青身の魚 | |
・10ヶ月が過ぎたら白身の魚に加えて使用可能。 | |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・鯵(あじ)がお勧め。鯖(さば)はアレルゲンがあるので、1才以降に使う。 |
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冷凍した離乳食 | |
・1週間で使い切る。 | |
雰囲気 | |
・「おいしいね。」「これは人参だよ。」など、心地よくなる雰囲気を演出する。 | |
桑島栄養士のワンポイントアドバイス ・母子のアイコンタクトはここでも重要。赤ちゃんたちは、生まれた直後から母の視線を支えにして、自己の居場所を確かめながら、安心感に包まれています。 |
以上、「桑島靖子元社会館保育園栄養士」の社会館離乳食と一人の母親が参考にされていたネット・雑誌のやり方を対比させて頂きました。
離乳食の重要なポイント
両者の違い
両者の違いは、下記の4点にあります。
1.食欲
「手づかみ食べ」(自発性の端的な発揮)が赤ちゃんの食欲をいやが上でも高めてくれる。食材の感触(やわらかい・固い・温かい・ぬるぬるなど)を赤ちゃんが直接手指で知ることも食欲を支える記憶となる。
食事前の十分な遊びと食事のメリハリも重要です。赤ちゃんたちには空腹が、重要な調味料ですね。
2.味覚
味覚の原点を野菜スープ・おかゆに置く。ケチャップ・バター・マヨネーズに置かないことの大切さ。
3.野菜
苦みと酸味を野菜食の原点に置くと、野菜嫌いにならない。
4.アレルギー
タンパク質・アルゲンとなる食品を赤ちゃんに摂取させるタイミングが大切。アレルギー防止につながる。
「野菜嫌い」も「離乳食を食べてくれない」という悩みも、その原因は相当、はっきりしているのです。
2020年3月、この野菜スープを上げたら、赤ちゃんの「便秘」が治った、とお電話がありました。あなた様の幸運を祈ります。
「手づかみ食べ」を国が推奨!
本当?本当です。
厚労省が手づかみ食べを推奨し始めたのは、10年ほど前からです。本当です。
「手づかみ」が赤ちゃんの食欲増進に良いと、うすうす分かってはいたが、後始末が大変なので、保育士たちはスプーンで「給餌」をしてしまうのでした。が、後始末の大変さと、赤ちゃんの食欲=生きる意欲の向上と、どちらが重要かは明らかだったので、厚労省は、2008年「保育所保育指針」(「指針」は現在「厚生省令」ですので、保育所関係者は、その遵守を求められます。)に「手づかみ食べ」推奨の一文を追加したのです。
空腹感が「食べたい」の意欲に膨らんだ時、目の前に「離乳食」が置かれれば、まず手が出ると同時に、赤ちゃんは「食べたい」を実行に移します。その瞬間、赤ちゃんは「自己原因性感覚」(自分の決断が、世界の変化の原因になっているという自信。)形成の第1歩を歩みだすのです。
母たちは大変ですが、少しの期間です。赤ちゃんたちの変身ぶりを見れば、納得していただける、と桑島栄養士は言っております。
「苦みセンサー」を育むことのすばらしさ
NHKが2020年2月23日「食の起源」で、味の専門家たちが「おいしい」という場合、彼らの脳内の「苦みセンサー」を重要な支えにしていると報じた。食物が持つ苦みを人類は、一方で毒物信号と受け止めながら、時に味を良くする機能があることにも気づいてきた、という。一流のワインの専門家が、苦みをワインの味の重要要素と受け止めている、と。
ただし甘味等の5つの味覚がほぼ完成するのは、9才ごろであり、離乳食がすべてではないことは別稿「9歳の節(02 身体の成長)」にまとめている通りです。
桑島栄養士の「野菜スープ」(離乳食のスタート)
昔「果汁」が離乳の出発点だったのを止めて、厚労省が「野菜スープ」に代えて、もう20年くらいでしょうか。その野菜スープも桑島栄養士の作り方をすれば、誰でもどんな赤ちゃんをも、とりこにできます。赤ちゃんの目の色が変わります。
材料は5品。じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、キャベツそして昆布を柔らかくなるまで一緒にコトコト煮るだけ。スープは野菜スープとして、柔らかくなった野菜は今後の離乳食にもその日のおかずにも使えます。
どうぞお試しください。
月齢ごとのメニューや調理形態(大きさ)
以下に、社会館で出している実際の離乳食の例を掲載しました。
このようなシンプルなメニューで十分なのです。
メニューはごくごくシンプルに、それぞれの食材の味を味わえるようにしています。そして、噛む・咀嚼する・かじり取るということを重視するので、食材の大きさも大事にしています。
子どもにも、たまには食欲がないこともあるでしょう。
肩の力を抜いて。楽しい食事の時間になるようにできると良いですね。
どうぞ子育て支援センター「ゆりかもめ寺町分館」へ
子育て支援センター「ゆりかもめ寺町分館」 には、桑島栄養士監修の離乳食講座DVDや相談に乗ってくれる保育士、頼もしい先輩母達がいます。家で悩んでいる方はどうぞ足を運んでみてはいかがでしょうか。
2020年2月24日 園長 宮﨑栄樹